コロナでローン返済困難 減免制度「まず相談を」 弁護士会破産回避の可能性も

2021年2月4日 07時39分
 新型コロナウイルスの影響で収入が減り、住宅ローンなどの借金返済に苦しむ人が増えている。昨年12月、こうした借金の減額や免除を可能にする個人向けの「コロナ版ローン減免制度」が始まった。制度に詳しい弁護士は「自己破産せずに借金を減らせる可能性もある。まずは相談を」と呼び掛ける。 (砂本紅年)
 「コロナ禍の先が見えず不安だ」−。昨年十二月初め、東京の三弁護士会が三日間実施した電話相談会。飲食業やタクシー運転手、小売業などを中心に延べ二百十八人から住宅ローンや事業者ローンの返済に関する相談が殺到した。
 夫婦で雑貨を製作、販売する六十代男性はコロナの影響で売り上げが前年の三割程度に激減した。昨年春に銀行から事業資金として三百万円の融資を受けたが、数年前の消費者金融からの借金数十万円もまだ残っており、返済のめどが立たなくなったという。男性は弁護士の説明を受け、減免制度の利用を申し込んだ。
 この制度は、東日本大震災後に整備された支援指針「自然災害債務整理ガイドライン」の特則として付け加えられた。コロナ禍で収入や売り上げが減り、資産より負債が多く、将来的にも返済の見通しが立たない人が対象。法的な拘束力はないが、国は金融機関に税制上の優遇を与えるなどして、申請があれば尊重するよう求める。
 債務整理の種類としては、借りている側が、金融機関など貸した側と話し合って解決策をまとめる「任意整理」の一種。自己破産や個人再生など裁判所が関与する法的手続きと異なり、借金の軽減の手法や進め方を柔軟に決められる。
 通常の任意整理と大きく異なるのが、個人信用情報、いわゆる「ブラックリスト」に記録されないこと。債務整理後もローンやクレジットが利用しやすくなる。手続きを進める弁護士など「登録支援専門家」の支援も無料で受けられ、原則として保証人に返済を求めない。手元に残せる現金や預金は、自己破産時に法律で認められている上限の九十九万円が目安となるが、個別の事情が考慮される余地もある。
 住宅ローンは現在、多くの金融機関で返済条件が変更できる。それでも返済困難になると任意売却を迫られることも。自己破産の場合も通常、自宅は処分対象となる。しかしコロナ特則に沿った手続きなら、住宅ローンは従来通りの返済を続けながら、それ以外の借金の減免を受けるなどして、自宅を手放さずに済む可能性が残される。
 手続きを希望する人は、借入額が一番多い金融機関に制度の利用を申し込む。同意書が届いたら、専門家の支援を得て金融機関と話し合い、減免の条件を詰める。簡易裁判所の特定調停で、双方が同意すれば債務整理が確定する。特定調停の申し立て費用は債務者負担となる。
 ガイドラインの運営機関によると、昨年末までに制度を利用した千百七十八件のうち、債務整理が成立したのは五百三十八件。東京の弁護士で登録支援専門家の本沢陽一さん(44)は「ローンの減免が多くの人から必要とされていることは間違いない。まずは制度を知ってほしい」と話す。相談や問い合わせは各地の弁護士会へ。

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