奨学金は、大学生活で必要な学費や生活費を賄う手段のひとつですが、大学生が借りられる奨学金にはどんな種類があるのでしょうか。大学生が利用できる奨学金や、その条件、奨学金を借りる時の注意点などについてまとめました。

奨学金について知っておくべきこと1:大学生が借りられる奨学金の種類

大学生が利用できる奨学金は、給付型と貸与型に分類され、様々な団体によって運営されています。

給付型と貸与型の違い

給付型の奨学金は返済する必要がないのに対して、貸与型の奨学金は大学を卒業後に返済する必要があります。給付型よりも貸与型の奨学金の方が、提供している団体の数が多いです。また、貸与型の奨学金は、無利子のものと、利子がつくものがあります。

様々な奨学金制度

多くの大学生が利用しているのは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。日本学生支援機構の奨学金は、給付型と無利子の第一種、利子がつく第二種の3種類があり、給付型は貸与型との併用も可能です。日本学生支援機構の貸与型の奨学金は利用できる人数の枠が大きく、一定額を卒業までの期間に借りられるため、広く利用されています。

都道府県市区町村といった地方公共団体奨学金は、無利子の貸与型がほとんどです。利用するときは、日本学生支援機構の奨学金と併用できないことがある点に注意しましょう。

大学独自の奨学金は、成績優秀者を対象にした給付型や、経済的な理由で学業を続けるのが難しい学生を対象とした貸与型を設けているケースがあり、大学によって異なります。この他に、企業などによる民間団体による奨学金も、給付型や貸与型がありますので調べてみるといいでしょう。

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奨学金について知っておくべきこと2:大学生のうちに奨学金を借りられる条件

奨学金を利用するためにはどのような条件をクリアしなければいけないのでしょうか。利用者の多い日本学生支援機構を例に挙げて解説していきます。

奨学金を利用できる基準とは

利用できる条件は奨学金によって異なりますが、一般的に条件が厳しい方から、給付型、無利子の貸与型、利子がつく貸与型の順です。奨学金を利用できる条件として、学業の成績や親などの収入に関する基準が設けられていることが多く、申し込みにあたって高校や大学の推薦が必要なものもあります。多くの奨学金は採用枠が決まっており、選考によって利用の可否が決まるため、基準を満たしていても必ず利用できるとは限りません。

日本学生支援機構の奨学金の場合

日本学生支援機構の給付型の奨学金は、住民税非課税世帯や生活保護世帯の人が対象です。学習意欲や学業成績、学校生活などの推薦基準をもとに、高校からの推薦によって申し込めるもので、進学する年の前年の申し込みに限られています。

第一種と第二種には、高校3年生のときに申し込む予約採用は高校、大学で毎年春に募集のある在学採用は大学が窓口になり、原則として在学する学校長の推薦が必要です。予約採用では採用されなかった場合も、在学採用を申し込むことができます。

第一種の学力の基準は、予約採用では高校1年から応募時点までの評定平均が3.5以上です。在学採用の場合、1年次は高校2年と3年の評定平均が3.5以上、2年次以降は所属する学部や学科で3分の1以上の成績であることが条件になります。

第二種の場合、成績が平均水準以上、学ぶ意欲があるといった基準であり、第一種よりも緩やかです。

また、収入の基準は、平成30年度入学者の在学採用時では、私立大学に自宅から通う場ケースで、サラリーマンなど給与所得者の世帯で4人家族の場合、第一種は年収747万円以下が目安です。第二種は年収1,143円以下が目安となっていて、収入面にも違いがあります。

奨学金について知っておくべきこと3:大学を卒業したあとの返済について

大学の卒業後は、貸与型の奨学金は返済の義務が発生するため、無理なく返済することができるのか、考えてみる必要があります。

社会人になって使えるお金は意外と少ない

奨学金の返済は、卒業後すぐに始まります。一般的に大卒の初任給は20万円程度ですが、健康保険や厚生年金、雇用保険の保険料が引かれ、所得税が源泉徴収されるため、手取りは17万円に満たない額です。また、住民税は前年の所得に対して課税されますので、社会人2年目からはさらに住民税も引かれます。

日本学生支援機構によると、第二種奨学金を月額8万円で4年間借りたケースで、2016年3月卒業者の場合、月16,270円を20年間かけて返済していくのが一例です。10年程度での返済を目指すこともできますが、月々の負担は大きくなります。初任給は企業や職種によって幅がありますが、返済することに無理はないか、奨学金を借りる前に考えてみることが大切です。

就職浪人などのリスク

さらに、大学の卒業時に必ずしも正社員として雇用されるとは限らず、新卒者の就職動向は景気にも左右されます。契約社員や派遣社員として働く人や、就職浪人をしてアルバイトをする人もいます。たとえ無職であっても、基本的に大学を卒業すると返済が始まるので、このようなリスクがあるということも知っておきましょう。

ただし、奨学金によっては無職や低収入である場合は、返済が猶予される制度があります。たとえば、日本学生支援機構の場合は、減額返還制度や返還期限猶予制度が設けられています。減額返還制度は、月々の返済額を2分の1や3分の1に最大で15年減額するものです。返還期限猶予制度は、最大で10年、返済の猶予を受けることができます。しかし、収入などの基準を満たしていることが条件であり、毎年、申請が必要で審査もあります。さらに、返済する額を一時的に減らしたり、先延ばしにできたりするだけで、総返済額は変わりません。奨学金を借りると、将来にわたって借金を背負うリスクがあるのです。

大学生が奨学金を借りる際の注意点

奨学金を借りる際には、将来のことをよく考え、学業が疎かにならないように気をつけましょう。

返済の負担は人生にも影響

奨学金の返済が滞ると、返済猶予の手続きをしている場合などを除くと、延滞金が発生して返済額が増えてしまいます。また、奨学金の返済が負担となり、生活費が苦しくなって消費者金融から借り入れを行い、借金が膨らんでしまうケースも報告されています。貸与型の奨学金は学費のためとはいえ、借金の一種です。昨今では、奨学金の返済が滞ったことによって、自己破産するケースが目立ち、社会問題化しています。自己破産をすると、クレジットカードが作れない、住宅ローンを組めないといった大きなダメージを受けます。

あるいは、奨学金を順調に返済していても、結婚後も返済が続くことが理由で、まれに結婚自体が破談になるケースもあるのです。卒業後に無理なく返済できる額なのか、返済計画を考えたうえで活用することが大切です。

奨学金は停止や廃止されることもある

学業を疎かにしていると、奨学金の種類によっては貸与を停止されたり、打ち切りになったりすることがあります。休学や留年をしたり、著しく取得単位が少なく、4年制大学なら4年の修業年限で卒業できないことが明らかなケースなどです。生活費のためにアルバイトをする人も少なくありませんが、アルバイトが負担となり、授業に出られないようでは元も子もありません。学業に差し支えのない仕事や時間を選んで、アルバイトをするようにしましょう。

給付型の奨学金から利用する

奨学金を無理のない返済額に抑えるためには、給付型や無利子の貸与型の奨学金から優先して借りることが大切です。大学によっては、2年次以降に学業優秀者に対して給付型の奨学金を設けていますので、通っている大学にそのような制度があるか調べてみましょう。

奨学金や状況によっては大学卒業後の返済が困難な場合も!奨学金を借りるときは返済計画まで考えて借りることが大切

貸与型の奨学金は卒業後には、返済しなければならないお金です。奨学金によってはホームページで返済額がシミュレーションできますので、いくら返すことになるのか確認するなど、返済することまで考えて借りましょう。

参考

[1]奨学金の制度(給付型)申込資格
[2]https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/shikaku/index.html
[3]2018.07.17

[1]第一種
[2]https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/kijun/yoyaku/daigaku/1shu.html
[3]2018.07.17

[1]第二種
[2]https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/kijun/yoyaku/daigaku/2shu.html
[3]2018.07.17

[1]大学での申込資格・申込基準
[2]https://www.jasso.go.jp/shogakukin/moshikomi/zaigaku/koho_kettei/daigaku/index.html
[3]2018.07.17

[1]奨学金事業への理解を深めていただくために
[2]https://www.jasso.go.jp/about/disclosure/sonota/saikenkanrikaishuutou/__icsFiles/afieldfile/2017/06/06/28_1_sankou_shiryou_13.pdf
[3]2018.08.3

[1]減額返還・返還期限猶予リーフレット
[2]https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/__icsFiles/afieldfile/2017/07/11/gengaku_yuyo_leaflet.pdf
[3]2018.07.17

関連リンク

奨学金の返済のクチコミ・掲示板 - みん就(みんなの就職活動日記)
奨学金返せるのかのクチコミ・掲示板 - みん就(みんなの就職活動日記)

著者:yui

大学卒業後、メーカーの事務職や住宅関係の仕事の経験あり。趣味は美術館に行くこと。学生時代のアルバイト経験は、ファーストフードや販売、家庭教師や事務などを半年くらいずつ。接客関係のバイトが好きでしたが、一番印象に残っているアルバイトは、小売やカード事業を営む大手企業の本社の事務です。

大学生が奨学金を借りる時に知っておくべきこと4つ