借金三千万円で自己破産する者も…若者狙う「悪徳不動産業者」その手口
絶対手を出してはいけません長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を悪用し、若者に不動産投資をさせる不正が大規模に発覚しつつある。「なんちゃって」と呼ばれる古典的な手口だが、100件超の不正が一度に噴出するのは初めて。しかも発覚したのはまだ氷山の一角とみられる。
スルガ銀行の不正融資で暗躍した悪徳業者を野放しにしてきた国土交通省などの責任を問い続け、悪徳不動産業者のやり口をまとめた『やってはいけない不動産投資』を上梓した朝日新聞の藤田知也記者がリポートする。
マンション投資のつもりが、すぐに破産
ここに一通の決定文がある。
東京地方裁判所が今年3月、東京都内に住む女性について「支払い不能の状態にあることが認められる」として、破産手続きの開始決定を通知したものだ。
この女性は、不動産業者らからマンション投資に誘われ、2017年にJR埼京線の駅から徒歩十数分の場所にある築約20年のマンションを買った。問題は、彼女がお金を借りる「目的」を偽って住宅ローン「フラット35」を引き出し、物件価格を上回る多額の融資を受けていたことだった。
女性は業者の勧誘で約2000万円強の物件を買うため、フラット35で約2500万円を借り入れ、さらにリフォーム費用として計800万円の融資を信販大手ジャックスやスルガ銀行で受けた。借金は計3000万円を超える。
マンション購入と同時に、女性は業者との間で「サブリース契約」も交わした。業者が物件を借りて賃料を払う内容で、その賃料は住宅ローンなどの返済に充当されるはずだった。
ところが、この業者は昨夏ごろから賃料を払わなくなり、連絡もつかなくなった。約束された賃料はもらえず、住宅ローンの返済ができなくなって破産に――。
こうした人はこれから続出するかもしれない。
「驚くほど食いつきがよかった」
10連休中の5月4日、朝日新聞はフラット35を不動産投資に使う不正が多数発覚し、住宅金融支援機構が調査を進めていることを報じた。
調査対象となっているのは、東京都内の大手中古マンション販売会社が売り主の物件が中心で、100件を超える見通し。販売会社を昨年7月に懲戒解雇された元社員(50)は朝日新聞の取材に対し、「投資目的でフラット35を使ったのは(解雇されるまでの)約2年間で150件前後。仲間(仲介業者)といっしょにやった」と証言している。
フラット35は、住宅金融支援機構が民間金融機関と連携して提供する住宅ローン。国民が居住用の住宅購入を支援する目的で、最長35年間の固定金利で資金を貸すが、当初から投資目的でお金を借りれば融資契約に反するため、判明すれば一括弁済を求められる。
元社員によると、仲間内の仲介業者らとともに「年収250万円以上」「20年定額家賃保証」「キャッシュバックあり」「借金OK」といった条件を取り決め、付き合いのあるブローカーたちに客を集めさせた。ブローカーたちはSNSや投資セミナーなどで客を勧誘。「驚くほど次々と連れてきて、契約をこなすだけで大変だった」(元社員)という。