前回の記事「低年金時代、人ごとではない『高齢貧困』 危ない単身・女性」でも見たように、高齢の低所得層を中心に、低年金のリスクが広がり始めている。

 だが、その波はさらに下の世代にも及ぼうとしている。代表的なのが、バブル崩壊後の1990年代半ばから2000年代前半の雇用環境が厳しかった時代に非正規などで職に就くことを余儀なくされた人たち。いわゆる就職氷河期世代のそれである。

 「去年、自己破産しました」。群馬県に住む山木豊さん(仮名)はこの20年、県内の自動車関連工場などで非正規従業員として働いてきた。ところが2年前に買った自動車のローン負担が重くなって、自己破産を選ぶことになったのだという。

 56歳。就職氷河期世代の少し上だが、転職がその厳しい時代と重なったこともあり社員にはなれないまま。「苦しい生活をしてきた」と話す。

 長野県の高校を1983年に卒業し、群馬県にある大手電機メーカーの工場に正社員として入社した。9年間働いた後、義兄が長野県内で経営していた鉄工所に移ったが折り合いが悪くなり、飛び出したのが就職氷河期さなかの2001年だった。

 「もちろん、社員になろうと思ったけど、年も取っていたし、就職氷河期だしでとても無理だった」(山木さん)。以後は、地元の派遣会社に登録し、自動車部品メーカーの工場などを転々としてきた。

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